アルバム 発売日:2006/9/20 販売元:エム アンド アイ カンパニー |
自らの出身地・沖縄に思いを馳せて唄った作品。 1. ジントヨーワルツ 2. アロークローの夢 3. なりやまあやぐ 4. 傘なんて、いらない 5. うんじゅぬ島 6. 恋に二日酔 7. 青の楽園 8. うたかた 9. 花ぬ風車 10. 島のブルース 11. HANA NU KAJIMAYA-humoto group mix- 【 ライナーノーツ 】 【 桑江知子本人による解説&試聴 】 |
ライナーノーツ
大須賀猛
桑江知子は二度生まれる〜一度めは1979年。日本レコード大賞新人賞をはじめ、この年の主だった新人賞を総なめにした。
受賞曲でありデビュー曲である「私のハートはストップモーション」は、今でもJポップ(という言葉はそのころはなかったけれど)のスタンダードとして聞かれ、歌われ続けている。
二度めは2000年だ。
この年、琉球民謡コンクールで新人賞を受賞(のちに優秀賞も受賞)。三線を携えて島唄をうたう彼女の姿を見て世間は「方向転換」だと評した。ポップスから島唄へ。だがしかし、それは言葉通りの「方向転換」だったのか。そんな問いを解くカギが本作1曲めの「ジントーヨーワルツ」にある。
元曲は知名定繁作の「別れの煙」、そのメロディを照屋林助が改作し3拍子のリズムをほどこしたものが 「ジントーヨーワルツ」だ。定繁の息子である知名定男が歌い、定男がプロデュースしたネーネーズが世間に広めた。桑江知子が沖縄民謡に深くのめりこむきっかけとなったのは、90年代に出会ったネーネーズのステージだそうだが、ここではヤマトグチ(標準語)の歌詞を桑江自身が書き、笹子重治(ショーロ・クラブ)がほのかにボサ・ノヴァ風味のアレンジをほどこしている。
桑江が純民謡的な発声歌唱を血肉化していることは「花ぬ風車」
「なりやまあやぐ」などを聞いてもわかるが、「ジントーヨーワルツ」での彼女のヴォーカルは、そんな枠を越えて、すっきりとみずみずしく、(親と子の/恋しい人との)別れの歌であるにもかかわらず、ほんのりとした“幸福”を聞く者の耳に残す。
ポップスから島唄へ、ではなく、ポップスも島唄も。
つまりは、すべての歌からもらった幸福を、このひとは自分の天性の声を通してはぐくんできたのだ。
「歌わされていた」「アイドル歌手時代」を悔やむのでもなく、「沖縄民謡」に帰依するのでもなく。沖縄で言うウタサー(唄者/歌者)とは本来そういうひとのことなのではないか。
本作にはそんな桑江知子の先人ともいうべきひとの作品が2曲取り上げられている。
「恋に二日酔い」は宮古民謡「狩俣ぬイサミガ」をベースに、中島安敏(沖縄の血を引く)が作曲、西田佐知子が歌った曲のカバー。
ドゥーワップ・コーラスと三線の音とのチャンプルーがコミカルな味を醸し出す。
「島のブルース」は沖縄生まれ奄美育ちの渡久地政信が作曲し三沢あけみがヒットさせた曲。バス・フルートとチェロが奏でる幻想的な音界のなかで、桑江の声がゆったりと舞う。マーティン・デニーや細野晴臣にも聞かせたい(そして悔しがらせたい)素晴らしいトラックだ。
本作のタイトルはカジマヤー(風車)という。
歌は風車であり、それを回す、歌わせるのは声であり心である。
歌い手としての桑江知子は仮の姿であり、実は風なのかもしれない。
(大須賀猛)
作詞家 木下詩野
桑江知子さんとのコラボをするようになって、もういつの間にか「あ・うん」の呼吸のような確かな絆が生まれた。そして彼女とコラボをするたびに桑江知子というアーティストの存在感の大きさが私の中で日に日に膨らんでいくのだ。
彼女ほど「言葉」を大切に歌う人は、今まで大勢のアーティストを見てきたが、とても貴重な存在といえる。
丁寧に言葉を愛し、まるで叙情詩を朗読するかのように歌う桑江知子は音楽を越えた大切なメッセージを込めて、聴く人の心に種を植えていく。その種はいつの間にか大きな花を咲かせ、それぞれの心の庭に楽園を与える。
それが彼女の音楽なのだと私は思う。
桑江知子はいつの日も自然体で、在るがままだ。
媚びることもせず、ただ歌うことが大好きで、素直にジャンルを越えてどんな楽曲にも馴染んでしまう。
天性の、ナチュラルな才能を持つ愛すべきシンガーなのだ。
このアルバムはそんな彼女の才能が宝石のように散らばっている。
沖縄という美しい島を愛する彼女の無邪気な想いも、人を愛することに妥協をしない人柄も、この一枚のアルバムに収められた10の物語のあちこちに散らばっている。聴けば聴くほどに心地良く、まるで揺りかごに揺られているような気分にさせられる。
時にはせつなく、時には楽しげに、そして時に儚げに・・・。
あらゆる彼女の素晴らしい要素が、気負いも衒いもなく、存在しているのだ。
そしてそんな彼女を取り巻く、才能豊かなミュージシャンとのコラボレーション。
どの曲を聴いても、そのクオリティの高さに驚かされる。
完成度の高さは言うまでもないのだが、それ以上の彼女という存在を愛する気持ちが演奏のひとつひとつに感じられて、とても優しい気持ちになる。
実は私は一度も沖縄に行ったことがない。
行ったこともない人間なのにしっかりと沖縄を感じさせる、心の旅を誘う「カジマヤー」
私にとっては捉えどころのない風景のはずなのに、しっかりと風景が見えてくる。
彼女の声で「島へおかえり」と歌われてしまうと、ふるさとはもしや、沖縄ではなかろうかとさえ錯覚してしまう。
本当にこれには驚かされた。
故郷を知らない都会育ちの私に、お婆が語りかけてくる。
私もそろそろ沖縄に行かねばならないなあ・・・。
島唄の素晴らしさを、私に教えてくれた、色濃いアルバム「カジマヤー」をこの世に誕生させてくれた桑江知子に、心から感謝する。
そしてこのアルバムに触れたすべての人たちが、本当の故郷を知ることができるように祈りたい。
桑江知子の歌声は、心の故郷を教えてくれる。
このアルバムを肴に泡盛を一杯・・・
女一人酒で酔いたい気分である。
(木下詩野)
桑江知子 本人による曲解説
1. ジントヨーワルツ 作詞/知名定繁 作曲/照屋林助、ヤマトグチ、桑江知子 |
知名定繁さんの名曲『別れの煙』の詞をもとに照屋林助さんが改作した名作。 私は、古謝美佐子さんのコンサートで初めて聞きましたが、大変感動しました。 シンプルなメロディー程、言葉がよく聞こえてきます。 たくさんの方にこの感動を伝えたくてやまと口をつけてみました。 |
2. アコークローの夢 作詞・作曲/桑江知子 |
私の回りには、沖縄重症患者(沖縄大好き人間)がたくさんいます。 なかには、バリバリのキャリアウーマンもいて仕事帰りに会うとスーツ姿でバッチリ決めていますが、 プライベートはまるで別人。オンとオフを上手に切り替えてバランスをとっているようです。そんな彼女達の気持ちを歌ってみました。 夕暮れの薄暗くなりかけた頃をアコークローといいます。 |
3. なりやまあやぐ 沖縄県民謡 |
八重山は島唄の宝庫で、名曲がたくさん唄い継がれていますが宮古島の代表曲、女性から男性に向けての教訓歌『なりやまあやぐ』を取り上げてみました。 三線は、ギターと相性がいいですが、さらにチェロを加える事によって、いっそう深みが出たのではないかと思います。 |
4. 傘なんて、いらない 作詞/木下詩野 作曲/桑江知子 |
『月下美人』という楽曲で出会い、前作『月詠み間』で共作した作詞家、木下詩野さんとのコラボ第2段! 友人でもある彼女とは、曲作りを始める前からネタ集めをしているようなところがあって、ワインを飲みながらのゆんたくからアイディアが生まれます。 久しぶりに超ラブバラードを歌いたくなって完成。 皆さん、泣かないでね・・・。 |
5. うんじゅぬ島 作詞・作曲/宮沢和史 |
初めてこの唄を聞いた時、鳥肌がたちました。 そして、2度目は一緒に唄ってた。 |
6. 恋に二日酔 作詞/若山かほる 作曲/中島敏 |
40年程前に宮古民謡『狩俣のいさみが』をアレンジして、西田佐知子さんが唄い沖縄でヒットした曲。 なぜか?いろんな方のお薦めもあり、ライブで取り上げたら大受け!なんでかね~(汗) レコーディングでは、妹尾武さんのコーラスアレンジがさらにバカ受け! 即興に近い形で録音が行なわれました。 歌詞に注目されたし。 |
7. 青の楽園 作詞/中島えりな 作曲/淡海悟朗 |
映画『マリリンに逢いたい』の舞台となった沖縄県慶良間諸島、座間味村のイメージソング。 『青の楽園』とは、まさにこのような島の事を言うのでしょう。 世界中のダイバーが集まる島の海はまるで竜宮城です。 沖縄へ行ったら是非離島へも渡って下さいね。 |
8. うたかた 作詞/木下詩野 作曲/桑江知子 |
20代の頃に書いてた曲が、木下詩野作詞、ショーロクラブとのコラボで甦りました。 秋の夜長、月明かりの下でゆったりと・・・。 |
9. 花の風車 沖縄民謡 |
沖縄は長寿の島と言われます。それは、年上の方を敬う土壌があるからだと思います。 生誕97歳のお祝い風車祭(カジマヤー)を来年迎える、 桑江家のおばあちゃんの為に花の風車』を唄いました。 本編では斬新なアレンジで、そしてボーナストラックでは民謡スタイルで。 大好きなおばあちゃん、うんと長生きしてね。 |
10. 島のブルース 作詞/吉川静夫 作曲/渡久地政信 |
三沢あけみさんのヒット曲として知られる『島のブルース』。 子供の頃から耳馴染みのある曲をカバーしました。 原曲とは違う仕上がりになりましたが、世界に一つしかない手作りの楽器ハーモニックフルートの音色が、なつかしさをいっそう引き出してくれます。 |